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10月。
日が落ちるのが早くなった。
時計の針が指す時間と窓の外の景色が少しずれている事に、それを実感する。
電気をいまだつけないままの大教室は、妙にひっそりとしていた。外灯の光源が微かに届いて、窓にうっすらと光を反射させている。そこから階段にこぼれたこころもとない光が、段階的な闇を作る。そして最後に廊下の電気が、ドアの隙間から漏れてすっと暗闇の中にのびていた。
あとは、まったくの闇だった。
三上は、窓の下。しゃがみこんだ姿勢で、同じように床に座り込んで壁を背にしている渋沢を見る。向かい合った姿勢。窓から差し込むわずかな光が、渋沢の表情に深い濃艶を描いている。三上がゆっくりと手を伸ばすと、渋沢は少し困ったような表情で顔をゆがめた。
「…授業なんだが」
「へえ」
「…三上」
「うっせえな、知ってるっつの」
「なら…」
「サボれ」
「もうすぐ試験なんだが…」
「知らねえよ」
事実、知ったことかと思う。第一、渋沢が単位を落とすなんてことはあるはずがないのだ。落とすということの方が驚きに値する。それにあの授業に至っては、単位を落とすことなんて有り得ないのだ。その辺を渋沢は理解していない。
三上は伸ばした手のひらを、渋沢の傍らにある壁に這わす。そうしてひんやりとした他人行儀な冷たさを片方の手に感じながら、もう一方の手で渋沢の首筋に触れた。対照的な二つの温度が、三上をどこか興奮させる。渋沢が、三上、と警告を発するような鋭さでいう。三上は当然のようにそれを無視して、わざと緩慢な動作で渋沢の胸元を撫でる。そしてするりとその手をシャツの中に滑り込ませ、壁についていた方の手でボタンを外す。ひどく性急に。そうやって彼の上半身が露になるその時まで、渋沢は滑稽なほどおとなしく、従順に為すがままにされている。
不意に三上は、思い立ったように渋沢からさっと手を離す。渋沢はそれに不思議そうな、けれど同時に何かを乞うような表情で顔をあげる。三上はふっと笑って、
「授業行くんじゃねえの?いけば」
突き放すように言う。渋沢はあからさまに顔を歪めて、三上を見返す。このまま本当に放っておいたら、どうなるだろうか。わずかに芽生えた好奇心は、けれどすぐにかき消された。ほのかな光に照らされた渋沢の表情は、体の奥に眠っている欲望を妙に貪欲に呼び覚ます。三上はゆっくりと唾を飲み込んだ。
「なあ、しぶさわ」
いくんじゃねえの。まるで意味を成さない言葉を発しながら、三上は再び渋沢の胸に手を伸ばす。手のひらで乱雑に撫でてから、その場所を親指と人差し指で摘み上げると、渋沢は素直な反応をよこす。
「ああ、イくのか?」
手のひらと指の先でもてあそびながらクックと笑ってやると、ひどく真面目に睨み返される。
なあ、だってお前、あの教授は多分お前のことそういう目で見てるんだぜ。俺だって相手が女ならば構わないんだ、なあ、そうだろう。でも、最低なことに男なんだ。相手は男で、しかも教授だ。お前そういうのに、弱いじゃねえか。
隣の教室から、マイクを通した低い声がかすかに聞こえてくる。
なあ、お前の声、あいつに聞かせてやろうじゃねえか。
三上は渋沢に見せ付けるように唇をゆっくりと舌で湿らしてから、渋沢の胸に顔をうずめ、たちあがったそれを口に含んだ。