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(藤三前提。三上はJリーガーで、藤代はスペインでもイタリアでもどこでもいいけどそこらへんに行ってて、そしてW杯の1年前くらいだと思ってください)
軽い眩暈を覚えた。何の抑揚もない新聞の印字に、だ。
『三上代表初選出』
スポーツ面の隅っこに載せられた仏頂面の写真を眺めながら、こんなことならせめてもう少し愛想良くしておくんだった、と三上は小さな後悔を心の中で呟いた。
それから大きく伸びをして、ごろんとソファに寝そべる。
背を預けたソファの柔らかな弾力と、誰もいない部屋の静寂がどこか心地よく三上の身体を包んでいた。時刻はとうに午前0時を過ぎている。
知人や友人からの、祝いと銘打った冷やかしの電話やメールがようやくひと段落ついて、はじめて「代表」というその言葉の重みを味わっているところだった。
寝転んだそのまま缶ビールを口に運んで、泡ごとごくりと呑み下す。喜びが身体にしみこむように、じゅわっと爽快な音をたててビールは喉を流れた。
ああ、幸せだ、と脈絡もなしに思う。
そして次の瞬間同じように何の脈絡もなしに頭に浮かんだその人の面影に、三上はあやうくむせ返りそうになる。
形ばかり咳き込みながら、けれどその人間を思い出したときの常の習いで、時計に目をやっていち、にい、さん、と無意識に頭の中で短針を進める。
…あー、こんな時間にあいつ起きてるわけねえな。休日の昼間じゃねえか。
そうして進めた針の指す時間に少しだけがっかりする。けれど時間が時間だったら本当に電話をかけようとしていただろう自分に我に返って、瞬間寒い気持になった。
これじゃあ、ただの浮かれちゃってるしょうもねえ野郎じゃんか。
俺は確かにここ半年くらい代表に選ばれちゃうくらい好調で、だけど、……あいつは…。
先刻床の上に投げやった新聞を手元に引き寄せて、自分の写真の横の記事に目をやる。藤代、というもう何年も付き合ってきた男の名前が、ネガティブな色合いを放つその記事を装飾していた。
一通りその記事を読み直して、遠い空の下、家で一人ぼっちで寝ているであろうその男をまぶたの裏に想像する。勿論、藤代がそうしているという保証はどこにもなくて、それは三上の想像の範囲内でしかないのだけれど。
このままでは代表も危うい、その記事を頭の中で反芻して、三上はチッと舌打ちした。んなわけねえじゃねえか、俺が選ばれて、あいつが漏れるなんて、そんなこと。
それは、ありえないことだ。
こいつらはわかってない、それはあり得ないことなのだ。
怒りを含ませたその言葉を口の中で発したその時、不意にルルルル、という電話の音に似せた電子音が静寂を破った。
唐突の事に思わずびくりと肩をふるわせる。けれどすぐに我に返って引き寄せた携帯電話の、ディスプレイをのぞきこんで再びぎょっとする。
「…なんで、あいつ」
そこに藤代の名前は表示されてはいなかったが、国際電話を意味する通知不可能の文字は、それと同義だった。
…今の俺に、他人のことを構ってる余裕なんてあるのかと言われたら、そりゃ確かにねえよ。例えばこうやって絶妙なタイミングでかかってくる、やつからの電話に出ることを躊躇する辺り、浮かれてる証拠なのかもしんねえけどさ。
そしてさらに例えば、あいつが俺のこのニュースに、落ち込むかもしれないということを考えてるあたり、救いようがねえほどの。
深呼吸ひとつ、耳に押し付けた携帯電話から、間髪入れず藤代の声が飛び込んできた。
「先輩、代表デビュー…じゃないか、初代表選出おめでとうっす!」
「あ、あー、さんきゅ」
まさかいきなりそこから来るとは思わなくて、思わず気おされたままに返事を返す。せめて最初は挨拶とか、と説教をたれそうになって、けれど寸でのところで思いとどまった。
「あれ、なに、浮かないかんじ」
拍子ぬけしたような藤代の声にこっそり笑ってから、三上はわざと呆れたように肩をすくませた。
「選ばれたからって出れるわけじゃねえからな、これからだろ」
「わー相変わらずですねー、そういうところ」
感心したような藤代の声音に、さっきまでの浮かれに浮かれていた自分を思い出して苦い顔になる。
「ん、まあ…、中学の時痛い目見たしな。嫌でも謙虚になるっつの」
言いながら、そうだよな、と自分に言い聞かせるようにうなずいた。
「でも俺好きですよ、そういうなんか先輩のジジくさいとこ」
「ジジ…、てか俺のことはいいよ、お前はどうなんだよ」
「あー、うん、まーまーかな」
「うそつけ、調子いい時のお前が電話してくるわけないだろ」
僅かにトーンが変わった藤代の声に、重ねるように返した。確かに藤代は調子がいいときには電話のひとつもよこさないし、最悪な時には電話にさえでなかった。つまり今こうやって電話をよこすというその事自体、不調な証拠なのだ。
つまりやつにいたっては、音信不通というその事こそ、好調を測るバロメーターだった。
「あ~、…ばれてました?はは」
茶化すような物言いに、大げさなため息をついてみせる。
「はは、じゃねえよ、ったく。お前は俺の憧れなんだから、しっかりしてくれよ」
「……」
「…なに?」
「…ううん、先輩、クサいこというようになったなと思って」
「バカ、俺だって20過ぎれば丸くなるっつの」
「そうかー先輩は俺に憧れてたのかーそうかー」
「藤代」
「はい?」
「死ね」
「ひっど!!どこが丸くなってんですか!」
「うっせえよばーか。まあとりあえず俺様はJリーグ1を誇る正確なキックでもって代表の座を勝ち取りますのでよろしく」
「しかも謙虚にもなってないし!」
「ばあか、貪欲であることは重要なんだよ。それにまあ、今の状況だったらスタメンに入ることは難しいのは確かだし。俺の武器はクロスだけど、FWとの連携がなってないから、結局使えねーんだよな。問題は俺がそんな短期間でチームに溶け込めるはずもないっつーことで。ましてやFWとの連携なんて正直ムリだな」
「先輩…」
「だからお前、早く復帰しろ。藤代、お前だったら俺は心置きなくサッカーができる」
なるたけ傲慢に言い切ってから、
(それから、)
と心の中で付け足す。
(またお前と一緒のフィールドで、サッカーがやりたいんだなんてそんなこと、言えねえけど。それが夢だなんて、言えねえけど、)
「…先輩、口がうまくなりましたね。それで何人女がコロっと」
「アホ…人がせっかく真面目に…」
「うそです、先輩、絶対代表に残っててくださいよ」
「…おう、まかせとけ」
絶対ですよ、と念を押すように繰り返した藤代の声の強さに、三上は思わず笑みをこぼした。
そうだ、お前はそうでないと。
そうじゃないと、俺は、これまで一体何を目指してきたのか、わからなくなってしまうじゃないか。こんなところで挫折するお前を、俺は追ってきたわけじゃねえんだ。
なんてこと、死んでも言えねえけど。
軽い眩暈を覚えた。何の抑揚もない新聞の印字に、だ。
『三上代表初選出』
スポーツ面の隅っこに載せられた仏頂面の写真を眺めながら、こんなことならせめてもう少し愛想良くしておくんだった、と三上は小さな後悔を心の中で呟いた。
それから大きく伸びをして、ごろんとソファに寝そべる。
背を預けたソファの柔らかな弾力と、誰もいない部屋の静寂がどこか心地よく三上の身体を包んでいた。時刻はとうに午前0時を過ぎている。
知人や友人からの、祝いと銘打った冷やかしの電話やメールがようやくひと段落ついて、はじめて「代表」というその言葉の重みを味わっているところだった。
寝転んだそのまま缶ビールを口に運んで、泡ごとごくりと呑み下す。喜びが身体にしみこむように、じゅわっと爽快な音をたててビールは喉を流れた。
ああ、幸せだ、と脈絡もなしに思う。
そして次の瞬間同じように何の脈絡もなしに頭に浮かんだその人の面影に、三上はあやうくむせ返りそうになる。
形ばかり咳き込みながら、けれどその人間を思い出したときの常の習いで、時計に目をやっていち、にい、さん、と無意識に頭の中で短針を進める。
…あー、こんな時間にあいつ起きてるわけねえな。休日の昼間じゃねえか。
そうして進めた針の指す時間に少しだけがっかりする。けれど時間が時間だったら本当に電話をかけようとしていただろう自分に我に返って、瞬間寒い気持になった。
これじゃあ、ただの浮かれちゃってるしょうもねえ野郎じゃんか。
俺は確かにここ半年くらい代表に選ばれちゃうくらい好調で、だけど、……あいつは…。
先刻床の上に投げやった新聞を手元に引き寄せて、自分の写真の横の記事に目をやる。藤代、というもう何年も付き合ってきた男の名前が、ネガティブな色合いを放つその記事を装飾していた。
一通りその記事を読み直して、遠い空の下、家で一人ぼっちで寝ているであろうその男をまぶたの裏に想像する。勿論、藤代がそうしているという保証はどこにもなくて、それは三上の想像の範囲内でしかないのだけれど。
このままでは代表も危うい、その記事を頭の中で反芻して、三上はチッと舌打ちした。んなわけねえじゃねえか、俺が選ばれて、あいつが漏れるなんて、そんなこと。
それは、ありえないことだ。
こいつらはわかってない、それはあり得ないことなのだ。
怒りを含ませたその言葉を口の中で発したその時、不意にルルルル、という電話の音に似せた電子音が静寂を破った。
唐突の事に思わずびくりと肩をふるわせる。けれどすぐに我に返って引き寄せた携帯電話の、ディスプレイをのぞきこんで再びぎょっとする。
「…なんで、あいつ」
そこに藤代の名前は表示されてはいなかったが、国際電話を意味する通知不可能の文字は、それと同義だった。
…今の俺に、他人のことを構ってる余裕なんてあるのかと言われたら、そりゃ確かにねえよ。例えばこうやって絶妙なタイミングでかかってくる、やつからの電話に出ることを躊躇する辺り、浮かれてる証拠なのかもしんねえけどさ。
そしてさらに例えば、あいつが俺のこのニュースに、落ち込むかもしれないということを考えてるあたり、救いようがねえほどの。
深呼吸ひとつ、耳に押し付けた携帯電話から、間髪入れず藤代の声が飛び込んできた。
「先輩、代表デビュー…じゃないか、初代表選出おめでとうっす!」
「あ、あー、さんきゅ」
まさかいきなりそこから来るとは思わなくて、思わず気おされたままに返事を返す。せめて最初は挨拶とか、と説教をたれそうになって、けれど寸でのところで思いとどまった。
「あれ、なに、浮かないかんじ」
拍子ぬけしたような藤代の声にこっそり笑ってから、三上はわざと呆れたように肩をすくませた。
「選ばれたからって出れるわけじゃねえからな、これからだろ」
「わー相変わらずですねー、そういうところ」
感心したような藤代の声音に、さっきまでの浮かれに浮かれていた自分を思い出して苦い顔になる。
「ん、まあ…、中学の時痛い目見たしな。嫌でも謙虚になるっつの」
言いながら、そうだよな、と自分に言い聞かせるようにうなずいた。
「でも俺好きですよ、そういうなんか先輩のジジくさいとこ」
「ジジ…、てか俺のことはいいよ、お前はどうなんだよ」
「あー、うん、まーまーかな」
「うそつけ、調子いい時のお前が電話してくるわけないだろ」
僅かにトーンが変わった藤代の声に、重ねるように返した。確かに藤代は調子がいいときには電話のひとつもよこさないし、最悪な時には電話にさえでなかった。つまり今こうやって電話をよこすというその事自体、不調な証拠なのだ。
つまりやつにいたっては、音信不通というその事こそ、好調を測るバロメーターだった。
「あ~、…ばれてました?はは」
茶化すような物言いに、大げさなため息をついてみせる。
「はは、じゃねえよ、ったく。お前は俺の憧れなんだから、しっかりしてくれよ」
「……」
「…なに?」
「…ううん、先輩、クサいこというようになったなと思って」
「バカ、俺だって20過ぎれば丸くなるっつの」
「そうかー先輩は俺に憧れてたのかーそうかー」
「藤代」
「はい?」
「死ね」
「ひっど!!どこが丸くなってんですか!」
「うっせえよばーか。まあとりあえず俺様はJリーグ1を誇る正確なキックでもって代表の座を勝ち取りますのでよろしく」
「しかも謙虚にもなってないし!」
「ばあか、貪欲であることは重要なんだよ。それにまあ、今の状況だったらスタメンに入ることは難しいのは確かだし。俺の武器はクロスだけど、FWとの連携がなってないから、結局使えねーんだよな。問題は俺がそんな短期間でチームに溶け込めるはずもないっつーことで。ましてやFWとの連携なんて正直ムリだな」
「先輩…」
「だからお前、早く復帰しろ。藤代、お前だったら俺は心置きなくサッカーができる」
なるたけ傲慢に言い切ってから、
(それから、)
と心の中で付け足す。
(またお前と一緒のフィールドで、サッカーがやりたいんだなんてそんなこと、言えねえけど。それが夢だなんて、言えねえけど、)
「…先輩、口がうまくなりましたね。それで何人女がコロっと」
「アホ…人がせっかく真面目に…」
「うそです、先輩、絶対代表に残っててくださいよ」
「…おう、まかせとけ」
絶対ですよ、と念を押すように繰り返した藤代の声の強さに、三上は思わず笑みをこぼした。
そうだ、お前はそうでないと。
そうじゃないと、俺は、これまで一体何を目指してきたのか、わからなくなってしまうじゃないか。こんなところで挫折するお前を、俺は追ってきたわけじゃねえんだ。
なんてこと、死んでも言えねえけど。
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ギャハハ!何このタイトル!
弱ってる藤代に最近惹かれてるんですけど(ていうか基本的に誰であれ弱ってるのスキスキ!)、やっぱり彼の性格上弱ってるとなると陰険なかんじになっちゃうんだよなー、と思いながらだらだら書いてみたら、藤代が弱ってるかどうかわからなくなった…。ただの三上のサクセスストーリーになってしまった…。ひさしぶりに超だらだらで~~~す~~。
あ、そんで三上はねー、自分のことが書いてある雑誌記事とか眺めて、うっとりするタイプだと思うんだ。ナルシストなのお~!ぎゃはは!(愛)※愛情の裏返しです
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