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空と陸地の、ヨーロッパとアジアの境目もわからないまま、いつの間にか気づけば成田についていた。『おかえりなさい』と書かれた看板の文字を、読むとはなしに目で追って、ひどくよそよそしい空港の空気を吸い込む。おかしいな、と思った。何の感慨もない。
だけど確かに、ここは藤代がイタリアに渡ってから、初めて帰ってくる日本だった。
足早に空港のゲートをくぐったところで新聞やら雑誌やらの報道陣につかまって、内心ひどくうんざりする。長時間のフライトで体が疲れている上に、聞かれるのは痛いことばかりだ。
調子が悪いのは、俺が一番わかってる。
内心の反論を飲み込みこんで、笑いながら目を逸らした。
その時みつけた見慣れた―――けれど1年ぶりの、―――顔に馬鹿みたいにテンションがあがった。
「ざまあみろ」
振り切るようにしてマスコミから逃げ出してきた俺に、三上先輩は馬鹿にしたような口調で開口一番そういった。例えば涙涙の感動的な再会を、期待していたわけではないけれど。なんかせめてもう少し、あるんじゃない?
ひどく肩透かしを食らった感じがして、思わず絶句した。これじゃあまるで、昨日今日あったばかりのようじゃないか。
「先輩、」
「いくぞ」
言うなりもう背を向けて歩き出した三上に、いい加減むっとした。
「どこへ」
「腹へってんだろ?お前が機内食なんて食うわけねえし」
好きなもんおごってやる、とつなげられて、俺は少しだけ機嫌を直した。
「ほんとに?でも、お金は俺の方が持ってると思うよ?」
「じゃあおごって」
追いついた肩ごしに憎まれ口をたたくと、振り向いた顔に得たり、とばかりに笑われて、急にどうしようもなくなった。
三上先輩が、いる。手の届く場所に。昨日までは、もう一生会えないかもしれないとさえ思っていた。
「おわっ、おまっ、くっつくな!」
慣れた手つきでハンドルを回す三上を横目で見ながら、ようやく息をついた。車は、空港を出て高速道路に滑り込む。夕暮れの近づく空の下、太陽が沈む方向へ向かって車はスピードをあげた。
「…みんな、元気ですか」
話したいことはいっぱいあるはずだったのに、いざ話そうとすれば何もでてこないことにびっくりする。とりあえず、何も考えないで口から出てくる言葉にまかせることにした。
「あ~、うん、ここんとこ忙しいからあんま会ってねえけどな。笠井は元気。同じ大学だし。…ていうか、おまえ俺だけじゃなくて、他の奴らにも連絡とってねえの?」
「…先輩が嫉妬するかと思って」
「ハイハイヨカッタネー」
「先輩、こないかと思った」
何の音もない車内に、一瞬だけ静寂が落ちる。
自分でも勝手すぎると思う。だって、1年間の間、一度も、「来週かえる」という連絡を除いては、メールだってしなかったのだ。
「…、嘘つけ」
前を向いたまま、三上はうんざりした顔で言った。俺はばれないように、口許でこっそり笑う。
「あ~あ、ばれてたか。三上先輩は、絶対くる、と思ってました」
「お前ほんと…くそムカつく。あああああ、そうだ、その顔みたらまず最初に張り倒してやろうと思ってたんだよ!!!」
「ちょ、安全運転安全運転」
ぐん、と自棄になってアクセルを踏んだ三上を、言葉とは裏腹に囃し立てるようにして笑った。
「三上先輩…俺、」
「ストップ。弱音?愚痴?俺はどっちもきかねえぞ」
「なんで!?」
「めんどくせえから」
「……」
「つうか第一、お前もうすぐ調子よくなんじゃん。意味のない愚痴は聞きたくない」
「はあ!?なにそれ三上先輩いつから預言者に?」
「アホ、予言じゃねーよ。お前が今不調なのは身体が原因なんじゃなくて、メンタルだろ。新しい環境とかお前嘘みたいに弱えじゃん。みんなに連絡しようとしなかったのもそれだろ。余裕ありそうに見えて余裕ないのが得意芸じゃねえか」
「え、そうなの!?」
「そうなの、って、えええええ?お前ほんと馬鹿じゃねえの?びっくりするわ!武蔵森んときも最初はぜんぜん調子わるかっただろ」
そして、間を空けるようにしてその後ポツリといったその言葉に、俺は、なぜだろう、ひどく興奮した。
「…連絡、くれなかったのも余裕がなかったせいだろ」
赤いテールランプの続く首都高を眺めながら、俺は湧き上がる衝動を抑えて、静かに言った。
「三上先輩、」
「やだ」
「…最後まで言ってないんですけど」
「やだ」
「先輩、そういうの、ツンデレっていうらしいですよ」
次の瞬間真っ赤になって怒りだす先輩を笑いながら、俺はやっぱりこの人がどうしようもなく好きだ、と思ってしまった。なぜだかそれはちょっとだけ、悔しかった。
だけど確かに、ここは藤代がイタリアに渡ってから、初めて帰ってくる日本だった。
足早に空港のゲートをくぐったところで新聞やら雑誌やらの報道陣につかまって、内心ひどくうんざりする。長時間のフライトで体が疲れている上に、聞かれるのは痛いことばかりだ。
調子が悪いのは、俺が一番わかってる。
内心の反論を飲み込みこんで、笑いながら目を逸らした。
その時みつけた見慣れた―――けれど1年ぶりの、―――顔に馬鹿みたいにテンションがあがった。
「ざまあみろ」
振り切るようにしてマスコミから逃げ出してきた俺に、三上先輩は馬鹿にしたような口調で開口一番そういった。例えば涙涙の感動的な再会を、期待していたわけではないけれど。なんかせめてもう少し、あるんじゃない?
ひどく肩透かしを食らった感じがして、思わず絶句した。これじゃあまるで、昨日今日あったばかりのようじゃないか。
「先輩、」
「いくぞ」
言うなりもう背を向けて歩き出した三上に、いい加減むっとした。
「どこへ」
「腹へってんだろ?お前が機内食なんて食うわけねえし」
好きなもんおごってやる、とつなげられて、俺は少しだけ機嫌を直した。
「ほんとに?でも、お金は俺の方が持ってると思うよ?」
「じゃあおごって」
追いついた肩ごしに憎まれ口をたたくと、振り向いた顔に得たり、とばかりに笑われて、急にどうしようもなくなった。
三上先輩が、いる。手の届く場所に。昨日までは、もう一生会えないかもしれないとさえ思っていた。
「おわっ、おまっ、くっつくな!」
慣れた手つきでハンドルを回す三上を横目で見ながら、ようやく息をついた。車は、空港を出て高速道路に滑り込む。夕暮れの近づく空の下、太陽が沈む方向へ向かって車はスピードをあげた。
「…みんな、元気ですか」
話したいことはいっぱいあるはずだったのに、いざ話そうとすれば何もでてこないことにびっくりする。とりあえず、何も考えないで口から出てくる言葉にまかせることにした。
「あ~、うん、ここんとこ忙しいからあんま会ってねえけどな。笠井は元気。同じ大学だし。…ていうか、おまえ俺だけじゃなくて、他の奴らにも連絡とってねえの?」
「…先輩が嫉妬するかと思って」
「ハイハイヨカッタネー」
「先輩、こないかと思った」
何の音もない車内に、一瞬だけ静寂が落ちる。
自分でも勝手すぎると思う。だって、1年間の間、一度も、「来週かえる」という連絡を除いては、メールだってしなかったのだ。
「…、嘘つけ」
前を向いたまま、三上はうんざりした顔で言った。俺はばれないように、口許でこっそり笑う。
「あ~あ、ばれてたか。三上先輩は、絶対くる、と思ってました」
「お前ほんと…くそムカつく。あああああ、そうだ、その顔みたらまず最初に張り倒してやろうと思ってたんだよ!!!」
「ちょ、安全運転安全運転」
ぐん、と自棄になってアクセルを踏んだ三上を、言葉とは裏腹に囃し立てるようにして笑った。
「三上先輩…俺、」
「ストップ。弱音?愚痴?俺はどっちもきかねえぞ」
「なんで!?」
「めんどくせえから」
「……」
「つうか第一、お前もうすぐ調子よくなんじゃん。意味のない愚痴は聞きたくない」
「はあ!?なにそれ三上先輩いつから預言者に?」
「アホ、予言じゃねーよ。お前が今不調なのは身体が原因なんじゃなくて、メンタルだろ。新しい環境とかお前嘘みたいに弱えじゃん。みんなに連絡しようとしなかったのもそれだろ。余裕ありそうに見えて余裕ないのが得意芸じゃねえか」
「え、そうなの!?」
「そうなの、って、えええええ?お前ほんと馬鹿じゃねえの?びっくりするわ!武蔵森んときも最初はぜんぜん調子わるかっただろ」
そして、間を空けるようにしてその後ポツリといったその言葉に、俺は、なぜだろう、ひどく興奮した。
「…連絡、くれなかったのも余裕がなかったせいだろ」
赤いテールランプの続く首都高を眺めながら、俺は湧き上がる衝動を抑えて、静かに言った。
「三上先輩、」
「やだ」
「…最後まで言ってないんですけど」
「やだ」
「先輩、そういうの、ツンデレっていうらしいですよ」
次の瞬間真っ赤になって怒りだす先輩を笑いながら、俺はやっぱりこの人がどうしようもなく好きだ、と思ってしまった。なぜだかそれはちょっとだけ、悔しかった。
*
藤代が海外にいってて、帰ってくるときの話。ハタチくらいかな。いろいろ突っ込みたいとこあるけどその辺はフィーリングで!!!!
三上は迎えられるより、迎えに行く方がいいな~。そんで待たせるより待つほうがいい!
藤代が海外にいってて、帰ってくるときの話。ハタチくらいかな。いろいろ突っ込みたいとこあるけどその辺はフィーリングで!!!!
三上は迎えられるより、迎えに行く方がいいな~。そんで待たせるより待つほうがいい!
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