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「・・・っなに、」
不意に前触れもなくすっと遠ざかった三上の身体に、無意識にすがって手をのばした。すぐに触れた生地の厚さと手触りは、慣れ親しんだそれではない。少しのびた爪の先に冷たいボタンの感触がして、ああ、爪を切らなくては、なんて頭の端っこでどうでもいいことを思った。
ボタンにかかった渋沢の手をやんわりとはがしながら、上体を起こした三上が見るからに満足そうな笑みを浮かべた。
「いい眺め」
渋沢は胡散臭げにそれをみやって、仰々しく大きなため息をついた。
まったくあきれる、と思う。いい年して学ランを着て楽しそうにはしゃぐ目の前の男と、そしてそれを見て少なからず喜んでしまっている自身に。けれどその事を認めてしまうのは若干くやしくて、できるだけ興味がなさそうな顔を繕った。
「・・・満足か」
「いや、思い出した」
「どうせどうしようもない事だろうな」
ソファの肘掛に頭の重さを押し付けながら、久しぶりに袖を通した制服の感触を肌に感じる。半ば脱がされかけたそれを、けれどわざわざ直すのも億劫で、わざと放置する。
「俺さ、お前が規則通りにきちっと着た制服をこうやって俺の手で乱していくのが、すっげえ好きだったんだ」
ほら、やっぱりどうしようもない事だ。
戻ってきた手が、皺になったシャツの上をすべって、取れかけたネクタイに触れた。掠れた音をたてて、ネクタイが外れる。
「・・・やべえ、興奮する」
まるで秘め事のように小声で告げられたその言葉は、今度は耳元で聞こえた。低く押し殺したその声が、感覚の内側をなでるように落ちていく気配にぞくりとする。そうしておまけのように耳をくすぐっていく髪の毛に、たまらず肩を縮めた。
「おいっ、なにやって、」
三上の吐息に翻弄されているほんの一瞬、ひどくあっさりと捕まえられた両手が、外したばかりのネクタイで背中の後ろでひと括りにされていた。
「これ、一回やってみたかったんだ」
「ふざけるな、昔やったじゃ、・・・あ」
しまった、と思って慌てて口をつぐむ。ついさっき昔のことなんて覚えてない、といったのは自分だ。目だけを動かして恐る恐る三上をみあげると、目が合った相手は得たりとばかりに口角を上げた。
「なんだ、覚えてるんじゃん」
「はずせ、このままやるつもりか?」
「嘘ついた罰。だってやべえ俺もう我慢できねえよ、ていうかもいっこ興奮する理由あんだけど、聞きたい?・・・なんだ、お前も興奮してんじゃん、カッチカチ」
「・・・っ!」
「・・・っ!」
強引に入り込んできた手が無遠慮にその場所を暴いて、隠していた欲望が空気にふれる。興味がないふりを繕っていたのに、まるで逆の反応をしているそこを興味深そうにながめられて、いたたまれなくなる。
「・・・みるな、ばか」
手が自由にならないままでは抵抗の仕様もなくて、そういうのがやっとだった。押さえ込めると思っていた熱情は、三上の手に触れられた途端、あっけなく瓦解した。まるで収縮するように下半身に集まった熱が、わずかにひっかかっていた冷静さをのみこんでいく。
「別に隠さなくても知ってるし、お前こういうの弱いって」
「・・・ぁ、・・・だまっ、れっ・・・」
「そういう反応ひさしぶり」
どこか楽しそうに笑う声が、気に障る。
どこか楽しそうに笑う声が、気に障る。
「ふざけるなっ・・・くっ・・・ァァイっ!!!!」
「まーだー。早いよ、本当に興奮してんじゃん、お前やっぱ変態なのな」
「おまえに言われたくない、っ・・・手はなせっ・・・」
「もうすこし我慢できるだろ。あの日本代表守護神の渋沢克朗が、制服のコスプレして俺の前だけで乱れて腰振ってるのとか、・・・やべえ興奮する」
「・・・・・・っ、ふざけんなっ」
「だから怒んなって。怒るよりもっと淫らに俺を誘ってよ、大人の魅力ってやつでさ」
ーーーーーーーーーーーーーーー
ぎ!ぶ!あ!っぷ!
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「…これ、あの人が?」
引き寄せられた三上の胸にそっと顔を埋めようとして、それを見つけた。鎖骨のあたりに浮かぶ、みみずばれのような赤く生々しい傷を。
伸ばした指先で薄く傷口をなぞると、三上がびくりと震えた。
「…あいつの話なんてすんじゃねえよ」
おちてきた言葉には、渋沢を咎めるような乱暴な響きがあった。けれど、それを喋る三上の目は傷ついたような哀しい目をしてるのだということを、渋沢は知っている。
「すまん」
「…いや、ごめん」
なんでお前があやまるんだよ、と笑うと、三上が頭を抱いた手で髪をすいて、もう一度ごめんと言った。
「だから、」
多分言っても無駄だから、それをとがめる代わりに苦笑をおとす。こうしてふたりでいる時、三上はいつも謝ってばかりだ。
でも、まあ確かに。三上が悪いといえば悪いのだ。なんて口には死んでも出せないけれど。
目を開いたまま、三上の肩口に頭を押し付ける。そうすると視界の傷は消えて、けれど代わりに三上の身体に無数に散らばった傷が、頭の中に浮かびあがってくる。こうして抱かれれば、三上の身体に刻み付けられた傷痕を、みないわけにはいかないのに。目に入ってしまえば、考えずにはいられないのに。
それをつけた、誠一先輩のことを。
三上、気づいてるのか?あの人は、おまえにだけ傷をのこすってこと。まるでおまえを、自分のものだと主張するように。
優しく触れる以外のあの人を、俺は知らないのだ。
どこかで三上がうらやましい、と思う自分がいたたまれない。
傷口をなぞって三上が震えるのは、快感ゆえではなくおそらく恐怖だ。
「しぶさわ?」
心の中の背徳感をぬぐいたくて、のぞきこまれた顔に口をよせる。応える三上の唇が優しくて、後ろめたさが余計につのる。
ごめん、と無意識に呟いて、我知らず苦笑した。
引き寄せられた三上の胸にそっと顔を埋めようとして、それを見つけた。鎖骨のあたりに浮かぶ、みみずばれのような赤く生々しい傷を。
伸ばした指先で薄く傷口をなぞると、三上がびくりと震えた。
「…あいつの話なんてすんじゃねえよ」
おちてきた言葉には、渋沢を咎めるような乱暴な響きがあった。けれど、それを喋る三上の目は傷ついたような哀しい目をしてるのだということを、渋沢は知っている。
「すまん」
「…いや、ごめん」
なんでお前があやまるんだよ、と笑うと、三上が頭を抱いた手で髪をすいて、もう一度ごめんと言った。
「だから、」
多分言っても無駄だから、それをとがめる代わりに苦笑をおとす。こうしてふたりでいる時、三上はいつも謝ってばかりだ。
でも、まあ確かに。三上が悪いといえば悪いのだ。なんて口には死んでも出せないけれど。
目を開いたまま、三上の肩口に頭を押し付ける。そうすると視界の傷は消えて、けれど代わりに三上の身体に無数に散らばった傷が、頭の中に浮かびあがってくる。こうして抱かれれば、三上の身体に刻み付けられた傷痕を、みないわけにはいかないのに。目に入ってしまえば、考えずにはいられないのに。
それをつけた、誠一先輩のことを。
三上、気づいてるのか?あの人は、おまえにだけ傷をのこすってこと。まるでおまえを、自分のものだと主張するように。
優しく触れる以外のあの人を、俺は知らないのだ。
どこかで三上がうらやましい、と思う自分がいたたまれない。
傷口をなぞって三上が震えるのは、快感ゆえではなくおそらく恐怖だ。
「しぶさわ?」
心の中の背徳感をぬぐいたくて、のぞきこまれた顔に口をよせる。応える三上の唇が優しくて、後ろめたさが余計につのる。
ごめん、と無意識に呟いて、我知らず苦笑した。
チャットでの「いけない子め…!」という私の発言から、らいぜんさんの素晴らしい脳みそが生み出した耽美系誠一(ジェントルらしい)。そこから話がふくらんで、ギムナジウムというひとつのジャンルができました。私達の中で。ちょっとね、自分でわかりやすいようにね、整理してみようという話です。
※性描写含みます。ていうかプラネタリウムの解説真剣に考えたのに、まるでエロのみです。すみません。
「・・・次に、南東の空をごらんください。冬は空気が澄んでいるので星が見えやすい季節です。東京の空でも、簡単に星座を探すことができます。そして空を見上げて一番最初に見つけることができるのが、この星座です。みっつ、星が並んでいるのがわかるでしょうか。そこを中心に大きく線を伸ばしてみると、砂時計のような形を描けます。そうです、オリオン座です。そしてさらに、この三ツ星をたどって東側に目を向けてみてください。夜空に輝く、ひときわ明るい星を見つけられるはずです。地球から見える恒星の中では太陽の次に明るいと言われている、シリウスです。シリウスは、おおぐま座……」
・・・やべえ、眠い。
かみ殺しきれなかったあくびが、咄嗟に隠そうとしたてのひらを通り抜けていく。ちらりと左側を見たのは、習い性のようなものだ。つい、機嫌を伺ってしまう。
暗闇に薄ぼんやりと見える横顔は、先刻と同じように星空に向いている。こっちに気づいた気配はなくて、内心ほっとした。
眠気は、けれどそれで引いてくれるわけではなく、けだるい小波のように襲ってくる。たとえば隣にいるのが誠一でなかったなら。たぶん、もうとっくに夢の中に落ちていただろう。ここで眠ってしまうことへの恐怖感が、眠気に辛うじて勝利している状態だった。
一体これ、あと何分あるんだ?ああ、ちゃんと時間把握しておけばよかった・・・。
延々と続くように思える解説に、軽く絶望した、その時。
「・・・・・・!」
星空を一心に見上げていたはずの誠一の手が、三上の膝にふれた。それがあまりにも唐突すぎて、思わず声を出しそうになるのを寸前で堪える。今度は恐る恐るではなく、明確な意思を持って左側を見た。けれど、誠一はまるで何事もないかのように、無表情に星をながめている。さっきと同じように。
完全に文句を言うタイミングを失って、戸惑った視線を膝にむけた。口で文句を言えないのに、払いのけるなんてことができるはずがない。
誠一の手は、膝から太ももを撫でるようにゆっくりと這い上がってくる。柔らかく触れた手で、ジーンズの生地が肌を掠める度に身を強張らせた。
くすぐったい。だめだ、意識すると・・・。
くっと唇を噛んで、視線を星空に戻した。意識するな、と言い聞かせる。たぶん意識したら、この人の思うツボなのだ。こんな所で。こんな所でくすぐったさの向こう側にはたどり着きたくなくて、必死に星空に意識をむけた。
「・・・・っ!」
手が、そんな三上の行動をあざ笑うように、太ももの内側に触れる。誠一は、相変わらずこちらには目もくれない。なのに、確かに明確な意図を持ったその動きは、星空へむけようとしていた三上の意識を強引に引き戻した。
触れる手は、相変わらず柔らかい。
けれど、その手がすくいあげるものは残酷だった。身体に植えつけられてしまったものなのか、心が覚えているのか。誠一の触れる場所から、じわじわと熱が広がっていく。直接的でない刺激は、けれど記憶が誠一の手を補完して、錯覚する。
うそだ、冷静になれ、と言い聞かせる。誠一の手は、ただジーンズの上をなでているだけなのだ。それだけで、感じるわけ・・・・・・感じる?
言葉にしてみると、生々しく感じてその言葉に絡めとられる。意識する。
誠一の手が、熱をもち始めたその場所を円を描くように往復した。
もう、星空に意識を貼り付けることなどしていられなかった。
「…せんっ…ぱい…ッ」
耐えられなくなって、小声で呼んだ。けれど、よこされたのはただの沈黙だった。
もどかしい、と思っている自分に泣きたくなる。さっきから触れてくる手は布越しで、しかも柔らかい。もっと触れてほしい、とよりにもよってこの場所で思っている自分がたまらなく恥ずかしい。
もう、これ以上・・・・
そう思ったとき、不意に辺りが明るくなった。ドームの星が明かりの向こうに消えていくのと同じようなスピードで、誠一の手が遠ざかっていく。
遠ざかっていく手に追いすがりたい気持ちを押さえつけて、静かに息を整える。隣に座る誠一が身じろぎした気配に、反射的に身体を強張らせた。急激に明るくなった室内で、素っ裸で放り出されたような心もとない気持ちになる。
・・・バレているだろうか?絶対バレてる、ていうか、バレないわけねえ・・・顔、熱いし。前もつらい。ごまかしようがない。
情けない気持ちで恐る恐る誠一の方に顔を向けた。
「・・・・おまえさ、」
誠一が、ひどく冷たい目でこちらを見ていた。
居たたまれない気持ちに、押しつぶされそうになる。
「まあいいや、行くぞ」
何かを言いかけた誠一は、けれど珍しくそれを飲み込んで立ち上がった。
絶対、何かひどいことを言われると思ったのだ。ぐっと覚悟してかみ締めていた奥歯が所在なく緩む。
「え、あの・・・」
「ぐずぐずすんな」
「あの、ちょっと、トイレ寄っていいですか?」
咄嗟に言ったのは、たぶん誠一の反応に動揺していたからだ。あと、自分が思ったよりも、切羽詰っていたのだと思う。
向こうに行きかけた冷たい視線がもどってきて、思わず視線を外す。
「早くしろ」
はき捨てるような言葉に視線を戻すと、誠一はもう背中をむけていた。
のろのろと、立ち上がる。
トイレは幸い、誰もいなかった。プラネタリウム自体、人がまばらだったのだ。
個室のドアに背をもたれて、大きく息を吐き出す。けれど、ゆっくりしている暇はない。誠一を待たせているのだ。
機械的にやればいいのだ、いつものように。そう思ったけれど、こんな場所で、誠一に触れられて、興奮して、自慰をするという事実がどうしても耐えがたかった。けれど、誠一の手の感触がまだ肌の上に残っていて、その疼きは消えてくれない。そして何より、この疼きを抱えたまま誠一と帰路を共にするなんて、考えたくなかった。それこそ、拷問にちがいない。
半ばあきらめるようにして、下半身に手を伸ばす。
しかし、その時不意に割ってはいってきた『ガンッ!』という物音と、もたれたドアの震動に手が止まった。
ドアが蹴られたのだ。
「!?」
「おい開けろ」
問いかける前に降って来たのは、抑揚のない低い声だった。そして、開けないはずがないと信じて疑わないというような、そんな傲慢な響きがあった。
「……先輩?」
「他に誰がいんだよ、開けろ」
「んな…嫌、です。すぐでますから」
「ふうん、お前早漏だもんな」
「・・・!!!!そんなこと、」
「服の上から触っただけで勃っちゃうしな。早漏で淫乱とか救いようねえな」
「・・・っ、やめてください、違います・・・・」
嘲るような声に、恥ずかしくて死にたくなる。ドアの向こうで冷笑している誠一の顔がありありと浮かんだ。浅はかな自分を呪いたい。誠一は、全部わかっていたのだ。
「どうせ、俺の事考えながら抜くんだろ?お前がここ開けないなら、ここから指南してやるからその通り触れよ、お前が感じるところ教えてやるよ。そういうの好きなんだろ?・・・そうだな、じゃあまず、乳首に・・・・、おう」
篭城なんて、最初からできないとわかっていた。耐えられなくなってドアを開くと、誠一が殊勝に笑った。
「ていうか、お前に選ぶ権利なんて最初からねえんだけど」
突き飛ばされるように個室内に押し込まれる。
プラネタリウムのトイレといえど、トイレまで宇宙的なわけではない。圧迫感を急激に感じて、詰めていた息を吐き出した。
「さて、どうぞ、続けて」
誠一が、壁に肩をついたまま、まるで当然のように言った。
「・・・なに、言ってんすか」
ぎょっとして、誠一を見る。
「あ、そうか、俺が教えてやんないといけないんだっけ。面倒くせえな」
「ちが、くて・・・」
「あっ、俺に触ってほしいの?」
誠一の手が、シャツの上から胸をなぞる。今日に限って薄着できてしまったことを後悔する。誠一の指先が、触れる前から硬くなっているその場所をあざ笑うように掠める。器用に外したボタンの隙間から指が入り込んで、乳首を摘んだ。
「・・・・くっ!!!」
痛みのような快感が下半身に駆け下りていく。今日初めて素肌に触れた誠一の手の感触は強烈で、それをずっと欲していたことを強引に認識させられる。
「なあ、聞いてる?俺に触ってほしいの?」
隠そうとしない苛立ちが、言葉ににじみ出る。ここで意地を張っても全然いいことはないとわかっていた。むしろ、悪くなるということも。拒否したら、誠一は自慰を強いるに決まっていたから。
「・・・・はい」
けれど、それを肯定するのはひどく屈辱だった。唇をかみ締めてうな垂れる。
「ふうん・・・だけど、聞いてなかった?お前に選ぶ権利なんてないんだよね」
はっとして、あげてしまった視線に後悔する。
誠一が、獲物を追い詰めた猛獣のように、獰猛な眼で笑っていた。
(終わりである!終わりである!)
「・・・次に、南東の空をごらんください。冬は空気が澄んでいるので星が見えやすい季節です。東京の空でも、簡単に星座を探すことができます。そして空を見上げて一番最初に見つけることができるのが、この星座です。みっつ、星が並んでいるのがわかるでしょうか。そこを中心に大きく線を伸ばしてみると、砂時計のような形を描けます。そうです、オリオン座です。そしてさらに、この三ツ星をたどって東側に目を向けてみてください。夜空に輝く、ひときわ明るい星を見つけられるはずです。地球から見える恒星の中では太陽の次に明るいと言われている、シリウスです。シリウスは、おおぐま座……」
・・・やべえ、眠い。
かみ殺しきれなかったあくびが、咄嗟に隠そうとしたてのひらを通り抜けていく。ちらりと左側を見たのは、習い性のようなものだ。つい、機嫌を伺ってしまう。
暗闇に薄ぼんやりと見える横顔は、先刻と同じように星空に向いている。こっちに気づいた気配はなくて、内心ほっとした。
眠気は、けれどそれで引いてくれるわけではなく、けだるい小波のように襲ってくる。たとえば隣にいるのが誠一でなかったなら。たぶん、もうとっくに夢の中に落ちていただろう。ここで眠ってしまうことへの恐怖感が、眠気に辛うじて勝利している状態だった。
一体これ、あと何分あるんだ?ああ、ちゃんと時間把握しておけばよかった・・・。
延々と続くように思える解説に、軽く絶望した、その時。
「・・・・・・!」
星空を一心に見上げていたはずの誠一の手が、三上の膝にふれた。それがあまりにも唐突すぎて、思わず声を出しそうになるのを寸前で堪える。今度は恐る恐るではなく、明確な意思を持って左側を見た。けれど、誠一はまるで何事もないかのように、無表情に星をながめている。さっきと同じように。
完全に文句を言うタイミングを失って、戸惑った視線を膝にむけた。口で文句を言えないのに、払いのけるなんてことができるはずがない。
誠一の手は、膝から太ももを撫でるようにゆっくりと這い上がってくる。柔らかく触れた手で、ジーンズの生地が肌を掠める度に身を強張らせた。
くすぐったい。だめだ、意識すると・・・。
くっと唇を噛んで、視線を星空に戻した。意識するな、と言い聞かせる。たぶん意識したら、この人の思うツボなのだ。こんな所で。こんな所でくすぐったさの向こう側にはたどり着きたくなくて、必死に星空に意識をむけた。
「・・・・っ!」
手が、そんな三上の行動をあざ笑うように、太ももの内側に触れる。誠一は、相変わらずこちらには目もくれない。なのに、確かに明確な意図を持ったその動きは、星空へむけようとしていた三上の意識を強引に引き戻した。
触れる手は、相変わらず柔らかい。
けれど、その手がすくいあげるものは残酷だった。身体に植えつけられてしまったものなのか、心が覚えているのか。誠一の触れる場所から、じわじわと熱が広がっていく。直接的でない刺激は、けれど記憶が誠一の手を補完して、錯覚する。
うそだ、冷静になれ、と言い聞かせる。誠一の手は、ただジーンズの上をなでているだけなのだ。それだけで、感じるわけ・・・・・・感じる?
言葉にしてみると、生々しく感じてその言葉に絡めとられる。意識する。
誠一の手が、熱をもち始めたその場所を円を描くように往復した。
もう、星空に意識を貼り付けることなどしていられなかった。
「…せんっ…ぱい…ッ」
耐えられなくなって、小声で呼んだ。けれど、よこされたのはただの沈黙だった。
もどかしい、と思っている自分に泣きたくなる。さっきから触れてくる手は布越しで、しかも柔らかい。もっと触れてほしい、とよりにもよってこの場所で思っている自分がたまらなく恥ずかしい。
もう、これ以上・・・・
そう思ったとき、不意に辺りが明るくなった。ドームの星が明かりの向こうに消えていくのと同じようなスピードで、誠一の手が遠ざかっていく。
遠ざかっていく手に追いすがりたい気持ちを押さえつけて、静かに息を整える。隣に座る誠一が身じろぎした気配に、反射的に身体を強張らせた。急激に明るくなった室内で、素っ裸で放り出されたような心もとない気持ちになる。
・・・バレているだろうか?絶対バレてる、ていうか、バレないわけねえ・・・顔、熱いし。前もつらい。ごまかしようがない。
情けない気持ちで恐る恐る誠一の方に顔を向けた。
「・・・・おまえさ、」
誠一が、ひどく冷たい目でこちらを見ていた。
居たたまれない気持ちに、押しつぶされそうになる。
「まあいいや、行くぞ」
何かを言いかけた誠一は、けれど珍しくそれを飲み込んで立ち上がった。
絶対、何かひどいことを言われると思ったのだ。ぐっと覚悟してかみ締めていた奥歯が所在なく緩む。
「え、あの・・・」
「ぐずぐずすんな」
「あの、ちょっと、トイレ寄っていいですか?」
咄嗟に言ったのは、たぶん誠一の反応に動揺していたからだ。あと、自分が思ったよりも、切羽詰っていたのだと思う。
向こうに行きかけた冷たい視線がもどってきて、思わず視線を外す。
「早くしろ」
はき捨てるような言葉に視線を戻すと、誠一はもう背中をむけていた。
のろのろと、立ち上がる。
トイレは幸い、誰もいなかった。プラネタリウム自体、人がまばらだったのだ。
個室のドアに背をもたれて、大きく息を吐き出す。けれど、ゆっくりしている暇はない。誠一を待たせているのだ。
機械的にやればいいのだ、いつものように。そう思ったけれど、こんな場所で、誠一に触れられて、興奮して、自慰をするという事実がどうしても耐えがたかった。けれど、誠一の手の感触がまだ肌の上に残っていて、その疼きは消えてくれない。そして何より、この疼きを抱えたまま誠一と帰路を共にするなんて、考えたくなかった。それこそ、拷問にちがいない。
半ばあきらめるようにして、下半身に手を伸ばす。
しかし、その時不意に割ってはいってきた『ガンッ!』という物音と、もたれたドアの震動に手が止まった。
ドアが蹴られたのだ。
「!?」
「おい開けろ」
問いかける前に降って来たのは、抑揚のない低い声だった。そして、開けないはずがないと信じて疑わないというような、そんな傲慢な響きがあった。
「……先輩?」
「他に誰がいんだよ、開けろ」
「んな…嫌、です。すぐでますから」
「ふうん、お前早漏だもんな」
「・・・!!!!そんなこと、」
「服の上から触っただけで勃っちゃうしな。早漏で淫乱とか救いようねえな」
「・・・っ、やめてください、違います・・・・」
嘲るような声に、恥ずかしくて死にたくなる。ドアの向こうで冷笑している誠一の顔がありありと浮かんだ。浅はかな自分を呪いたい。誠一は、全部わかっていたのだ。
「どうせ、俺の事考えながら抜くんだろ?お前がここ開けないなら、ここから指南してやるからその通り触れよ、お前が感じるところ教えてやるよ。そういうの好きなんだろ?・・・そうだな、じゃあまず、乳首に・・・・、おう」
篭城なんて、最初からできないとわかっていた。耐えられなくなってドアを開くと、誠一が殊勝に笑った。
「ていうか、お前に選ぶ権利なんて最初からねえんだけど」
突き飛ばされるように個室内に押し込まれる。
プラネタリウムのトイレといえど、トイレまで宇宙的なわけではない。圧迫感を急激に感じて、詰めていた息を吐き出した。
「さて、どうぞ、続けて」
誠一が、壁に肩をついたまま、まるで当然のように言った。
「・・・なに、言ってんすか」
ぎょっとして、誠一を見る。
「あ、そうか、俺が教えてやんないといけないんだっけ。面倒くせえな」
「ちが、くて・・・」
「あっ、俺に触ってほしいの?」
誠一の手が、シャツの上から胸をなぞる。今日に限って薄着できてしまったことを後悔する。誠一の指先が、触れる前から硬くなっているその場所をあざ笑うように掠める。器用に外したボタンの隙間から指が入り込んで、乳首を摘んだ。
「・・・・くっ!!!」
痛みのような快感が下半身に駆け下りていく。今日初めて素肌に触れた誠一の手の感触は強烈で、それをずっと欲していたことを強引に認識させられる。
「なあ、聞いてる?俺に触ってほしいの?」
隠そうとしない苛立ちが、言葉ににじみ出る。ここで意地を張っても全然いいことはないとわかっていた。むしろ、悪くなるということも。拒否したら、誠一は自慰を強いるに決まっていたから。
「・・・・はい」
けれど、それを肯定するのはひどく屈辱だった。唇をかみ締めてうな垂れる。
「ふうん・・・だけど、聞いてなかった?お前に選ぶ権利なんてないんだよね」
はっとして、あげてしまった視線に後悔する。
誠一が、獲物を追い詰めた猛獣のように、獰猛な眼で笑っていた。
(終わりである!終わりである!)
※性描写含みます。ていうかそれのみです。
・ひふみだけど藤三だよ!「あの人」は誠一です。
せめて俺が最初に先輩に出会っていたなら、と、叶いようのない「もしも」を何度も思う。
そして、俺はあの人の兄弟なのだと、三上先輩を抱くたびにどうしようもなく再確認する。どうしようもなく。
三上先輩が行為の最中に一瞬、遠い目をするたび、心の中をさあっと冷たい風が吹きぬける。その瞳の先をたどっていった向こうに、あの人の影を見つけてしまって。そしてそのたびにどうしようもない憎しみが身体の内側を支配して、気づけば手のひらの中の先輩を、硬く握り締めていた。
「ッ……!離せっ……くるしっ…」
先輩が、肩をはねさせて、苦しそうにうめく。
残念、あと少しで達するところだったのに。どこかそれを遠くから見る気分で、他人事のように先輩を見下ろした。
「ねえ、俺のどこがあの人に似てる?」
優しくかけたつもりの言葉は、けれど思いの他ひどく冷酷に響いたのかもしれない。先輩が、怯えるようにして顔をあげる。
「似て、ねえ、よ……あっ……!」
赤く充血した性器の根元を押さえたまま、先端に唇をつける。さっきから溢れ出している透明の液体を広げるようにして舐めると、三上が身体をよじるように声をあげた。
「ふじしっろ、やめっァ…!!!…ッ……」
「うそつき。ねえ、あの人のこと考えながらなんて、イかせてなんてあげないよ」
解放に向かうばかりだった熱が、その寸前で塞き止められて苦しいのだろう。たぶん無意識に、三上の腰が揺れる。
「そういうところっ、だ!!!」
自暴自棄になったのか、悪口のつもりなのか。吐き出すように投げられた言葉に、一瞬動きを止める。その反応に得たり、と思ったのだろう。若干余裕を持ち直した三上を見上げて、薄く哂った。先輩の表情が固まるのを見て、もう一度明確に笑ってみせた。言いにくいけど、今、地雷を踏んだんだと思うよ。あんたの、そういう無神経なところは、わりと好きなんだけどね。
「…じゃあ、なお更。先輩が泣いて懇願するまで離せないや」
もう、すでに泣き出しそうな先輩の唇に伸び上がってキスをした。
この、繰り返しだ。
セックスの度に、俺はあの人の血を分けた兄弟なんだと、再確認する。
(――――だから、最初から、優しくなんて、できるわけがないんだ)
・ひふみだけど藤三だよ!「あの人」は誠一です。
せめて俺が最初に先輩に出会っていたなら、と、叶いようのない「もしも」を何度も思う。
そして、俺はあの人の兄弟なのだと、三上先輩を抱くたびにどうしようもなく再確認する。どうしようもなく。
三上先輩が行為の最中に一瞬、遠い目をするたび、心の中をさあっと冷たい風が吹きぬける。その瞳の先をたどっていった向こうに、あの人の影を見つけてしまって。そしてそのたびにどうしようもない憎しみが身体の内側を支配して、気づけば手のひらの中の先輩を、硬く握り締めていた。
「ッ……!離せっ……くるしっ…」
先輩が、肩をはねさせて、苦しそうにうめく。
残念、あと少しで達するところだったのに。どこかそれを遠くから見る気分で、他人事のように先輩を見下ろした。
「ねえ、俺のどこがあの人に似てる?」
優しくかけたつもりの言葉は、けれど思いの他ひどく冷酷に響いたのかもしれない。先輩が、怯えるようにして顔をあげる。
「似て、ねえ、よ……あっ……!」
赤く充血した性器の根元を押さえたまま、先端に唇をつける。さっきから溢れ出している透明の液体を広げるようにして舐めると、三上が身体をよじるように声をあげた。
「ふじしっろ、やめっァ…!!!…ッ……」
「うそつき。ねえ、あの人のこと考えながらなんて、イかせてなんてあげないよ」
解放に向かうばかりだった熱が、その寸前で塞き止められて苦しいのだろう。たぶん無意識に、三上の腰が揺れる。
「そういうところっ、だ!!!」
自暴自棄になったのか、悪口のつもりなのか。吐き出すように投げられた言葉に、一瞬動きを止める。その反応に得たり、と思ったのだろう。若干余裕を持ち直した三上を見上げて、薄く哂った。先輩の表情が固まるのを見て、もう一度明確に笑ってみせた。言いにくいけど、今、地雷を踏んだんだと思うよ。あんたの、そういう無神経なところは、わりと好きなんだけどね。
「…じゃあ、なお更。先輩が泣いて懇願するまで離せないや」
もう、すでに泣き出しそうな先輩の唇に伸び上がってキスをした。
この、繰り返しだ。
セックスの度に、俺はあの人の血を分けた兄弟なんだと、再確認する。
(――――だから、最初から、優しくなんて、できるわけがないんだ)